― “らしさ”に縛られずに、輪郭を描く ―
Letting go of what I thought was me.
「あなたらしさを大切にしましょう」
そんな言葉に、背中を押されたことがある方は多いと思います。
でも、その言葉が少しだけ重たく感じた瞬間が、どこかにあったのではないでしょうか。
“らしさ”って、そんなに簡単に見つかるものでしょうか。むしろ、わからなくなるときのほうが多かったかもしれません。
わたし自身も、そうして何度も自分のかたちを探してきました。そして今、年齢を重ねたこのタイミングで、自分のかたち<outline> が、少しずつはっきりしてきたように感じています。そして同時に、それがまた静かに塗り重ねられていくような感覚も持っています。
そもそも、「らしさ」というものは、自分の意思とは関係なく、外から与えられることがあると思います。
家庭、仕事、人との関係性。
肩書きや役割。
そういったなかで、知らず知らずのうちに「これが私なんだ」と思い込んでいた時間が確かにありました。
でも、環境が変わったり、そこから離れたりすると、いつの間にかその“かたち”が曖昧になって、自分がどこに立っているのかわからなくなるようなことがあるのではないでしょうか。
そして、やっぱり思うのが「かたちは、描き直していい」ということ。
過去の自分に似合っていたものが、今の自分にはしっくりこないこともある。その違和感は、新しい“わたし”への変化のサインかもしれません。
なので、その気持ちにただ素直に委ねてみる。新しい波に乗ってみる。
そんな風に、今の自分に合うリズムで、かたちを変えていく。これができると自分に無理もなく、心も疲弊しにくい気がします。
環境が変わり自分の“立ち位置”が変わった時、無意識のうちに、自分の輪郭を何度も描き直してきたんだという気がします。最終的には無意識なので、気がつけば「ああ、カタチが変わっていたのだな」と後で気がつく。
何か迷いや違和感が出てきたそのたびに立ち返るのは、「私はどう在りたいのか?どう生きていきたいのか?」という問いでした。
ブランディングの現場でも、そんな場面に出会うことがあります。
「自分らしさを伝えたい」と相談に来てくれたクライアントが、話していくうちに、「あれ…私って、何がしたいんだっけ」と立ち止まったり、自分らしさを新しく定義し直したりします。
でも、それでいいのだと思います。
“らしさ”は、探して見つけるものではなく、自然とにじみ出てくるものだから。
今の自分にフィットするように、しなやかに、柔らかく整えていく。かたちを変えることで、presence(つまり、そこに“在る”ということそのものが放つ存在感)は、より鮮やかに、鮮明に現れてくるのだと思います。
今のあなたに似合う outline は、どんな色や線ですか?それは、どんな presence として、そこにあるのでしょうか。